2015年4月から放送開始のアニメには、なんと２社も兎に縁のある神社が登場しております。アニメファンの間では、実際に劇中に登場した場所を「聖地」というらしいですね。「巡礼」するとも聞きます。アニメへの「萌え」は、現代における「信仰」なのかもしれません。
『浦和の調ちゃん』と調神社
埼玉のU局であるテレビ埼玉を中心にスタートした５分アニメ『浦和の調ちゃん』。「調ちゃん」で「うさぎちゃん」と読みます。
埼玉県浦和に坐す調神社がその名の由来になっています。私も何度かお参りいたしました（2014年の初詣記事はこちら）。
本来は「調」は、伊勢神宮に納める租庸調（租税）の倉庫がこの地にあり、「調」の読みの「つき」が転じて「月」につながり、月待信仰と習合して、兎が神使となりました。
このローカルすぎるネーミング、埼玉県民と神兎研にだけ、にやりと喜びを分かち合えるのです。
このアニメは浦和市が完全バックアップ。埼玉県はアニメの「聖地」が多く、『らき☆すた』（2007年放送）の鷺ノ宮町や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』（2011年）の秩父などは、多くのアニメファンが「聖地巡礼」をしました。古くは『クレヨンしんちゃん』や『となりのトトロ』も埼玉なわけです。「聖地巡礼」を狙った観光PRを「コンテンツツーリズム」とまとめるようです。
主人公は高砂調ちゃん。浦和生まれの16歳。名前の由来はおばあちゃんから、近所の調神社より採ったと聞いたそうで。第１話からいきなり調神社へ参拝します。
調神社の狛兎と本殿が登場します。若干予算の問題なのか、それとも浦和をしっかりとPRするためなのか、背景は実際の写真を使っています。
2007年に参拝した時の狛兎と本殿の写真がこちら。狛兎が先代です。
『二拝二拍手一拝』の作法で拝む調ちゃん。えらい！
浦和に住む女の子達の日常が描かれます。各キャラクターは「浦和」が入っている８つの駅の擬人化だそうで。
twitterなどを見ていると、早速ファンの方が聖地巡礼をスタート、調神社には「痛絵馬（キャラクターを描いた絵馬）」が奉納されています。
調神社、さらに有名になりそうです。応援。
『響け！ユーフォニアム』と宇治神社
さて。もう一つ。
今期スタートアニメ『響け！ユーフォニアム』です。
聖地ブームの火付けともなった『らき☆すた』のアニメ会社である京都アニメーションが制作にあたっています。舞台を丁寧にロケハンし描くことで定評があります。
今回の舞台は京都の宇治。
この「宇治」、古くは「菟道」とも書いたようです。15代応神天皇の皇子である菟道稚郎子（うじのわきいらつこ）縁の地。「うじ」の由来はいくつか説があるようですが、道に迷った菟道稚郎子を、兎が振り返りながら導いたという説話も。
宇治の街が丁寧に描かれています。宇治川沿いのベンチは印象的に使われていますね。
主人公達は高校の吹奏楽部所属で、全国大会を目指す女子高生の青春と日常を描きます（なんか、この書き方オッサンっぽいな）。
さて、第１話に登場した宇治神社です。
宇治神社は、前述の菟道稚郎子を祭神として祀っており、創建は明らかではないながらも「延喜式神名帳」に載っている古社。私はまだ訪れたことはありませんのでHPの写真で。兎が道に迷った皇子を導いたという説話から、兎が神使とされているとのことです。
宇治神社公式HPはこちら
有名なのが、こちらの手水舎の兎像。こちらで手を清めてお参りするわけです。しっかりアニメで描かれておりました。
主人公の吹奏楽部顧問の滝先生の登場シーンに、宇治神社は描かれています。滝先生は赴任してきたばかり。ゆるい雰囲気だった吹奏楽部員達に、自身の目標設定をさせます。それは「全国大会に出場する」こと。
神兎の導きの説話があるこの神社で、滝先生は何を祈っていたのでしょうか。やはり「良き導き」でしょうか。
拝殿奥、滝先生の右手には、ピンぼけに描かれていますが、祭神を見返って導いた「見返り兎」の小像があります。
「末吉と吉ってどっちが上だっけ？」と話すカップルに、親切かつ余計なお世話で「上から大吉、中吉、小吉、吉、半吉、末吉、末小吉ですね。つまり吉の方が上です。」と話しかける滝先生。神兎研であれば「菟道稚郎子という皇子がいらして、うんぬんかんぬん・・」と話しかけるところですが、不審がられるのでやめましょう。
主人公の黄前久美子ちゃんが通う高校は北宇治高校ですが、こちらもロケ地が存在します。それが「菟道高校」。「菟道」は現在では「とどう」と読んでいます。この付近の地名ですが、「うじ」の漢字が別の読みで残っているのは面白いですね。
近くには、宇治神社と対をなしている「宇治上神社」もありますし、また狛兎があり花の寺として知られる「三室戸寺」もあります。アニメへの登場もあるでしょうか。楽しみです。