即位の礼 月像幢

即位の礼と日烏月兎


令和元年10月22日。本日は『即位礼正殿の儀』であり祝日です。ここ最近休日出勤していまして、まさに恩赦のお休み。家で体を休めながら、TVの中継を見ております。

即位の礼 正殿の儀

新天皇の御即位を世の中に示す日が、「即位礼正殿の儀」(御即位自体は5月1日でした)。皇居宮殿の松の間で行われました。

即位の礼 正殿の儀

世界中の王家、国家元首が見守る中、儀式は進んでいきます。

即位の礼 正殿の儀

日本の玉座である高御座(たかみくら)。普段は京都の御所にあるそうです。こちらに昇られた天皇陛下が、即位を宣明されました。

さきの日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより皇位を継承いたしました。ここに「即位礼正殿の儀」を行い、即位を内外に宣明いたします。
上皇陛下が三十年以上にわたる御在位の間、常に国民の幸せと世界の平和を願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その御心を御自身のお姿でお示しになってきたことに、改めて深く思いを致し、ここに、国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います。
国民の叡智とたゆみない努力によって、我が国が一層の発展を遂げ、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします。

これからの時代、この日本が、より平和で充実した時代になっていくことを、すべての人が祈る時間でした。

即位の礼 中庭

即位の礼 中庭配置さて、正殿前の中庭に目を移します。本日午前中は雨がふっており(ネットでは、三種の神器の天叢雲剣あめのむらくものつるぎの力ではと噂されていましたが)、本来並ぶはずの太刀や弓の捧持者は建物の中に入っていたようです(中庭配置 時事.comより)。

左右にはのぼり旗がひらめいています。より格の高い呼び名として「旛(ばん)」と呼ばれているようです。

正面より「万歳旛(ばんざいばん・ばんぜいばん)」、左右に別れて「日像纛旛(にっしょうとうばん)」と「月像纛旛(げっしょうとうばん)」。続いて「菊花章大錦旛(きっかしょうだいきんばん)」、五色の「菊花章中錦旛」「菊花章小錦旛」が並びます。

即位の礼 日像纛旛 即位の礼 月像纛旛

向かって右側が太陽を表す「日像纛旛」。左側が月を表す「月像纛旛」。「纛旛(とうばん)」とは、先端に房などがついた旗のことようです。

このような装飾は、古くより天皇即位や新年において立てられてきており、構成は変わっていません。ただ、この意匠になったのは明治以降で、神道的な純化を行った結果のようです。江戸以前では、以下のような、より神仏など混交した形でした。

即位の礼 旛類

【禮儀類典圖繪(国立公文書館蔵)より】

旗ではなく「宝幢(ほうどう)」と呼ばれ、それぞれ「日像幢(にちぞうとう)」「月像幢(げつぞうとう)」と名付けられています。黒塗りの柱が、9つの金銀の輪を貫き、その先端に日月が乗っている意匠。日像の中には「八咫烏」が、月像の中には「兎と蛙」が描かれていました。

即位の礼 月像幢

月桂樹の下で、薬を撞く兎と蛙。これは古代から、中国から日本に広がっていた月のイメージとなっています。

せっかくの即位の儀ですので、神兎も参加させていただけると良かったのですが、現在に至るまで遺っている月の意匠の向こう側に想像させていただくようにいたします。

即位の礼 万歳旛ちなみに、この左右には四神の旗があったようで、これが菊花章の旗の元の姿なのでしょう。

また「万歳」の文字が描かれた「万歳旛」には、鮎が描かれていたとのこと。こちらは日本書紀での神武天皇のエピソードが表現されているようです。

時代は移り、意匠は変化していきます。ですが、本質は引き継がれていきます。形を伝えるのも重要ですが、その意味を伝える方が重要と考えます。

つまり、変わっていきながら、変わらないものを伝えていく。

この平和な世、そして日本。
私達も、変わりながら、変わらずに、伝えていきたいと思います。

(執筆:令和元年10月22日)


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